結論: 退職金はふるさと納税の上限計算に原則含まれない
退職金(退職所得)は、他の所得(給与所得・事業所得・雑所得など)とは別の「分離課税」で計算されます。退職所得控除(勤続年数 20 年で 800 万円、20 年超は 1 年あたり 70 万円加算)を引いた残りの 1/2 が課税対象。この退職所得は、ふるさと納税の上限計算の元になる「住民税所得割」にも含まれません。
つまり、退職金 2,000 万円を受け取った年でも、給与所得部分(退職前の給与・賞与)が 400 万円なら、ふるさと納税の上限は給与 400 万円相当(約 4 万円)にとどまります。
1. 退職金にも住民税はかかる(分離計算)
退職金には住民税もかかりますが、源泉徴収で完結し、確定申告は不要です。これを「退職所得の住民税」と呼びます。この住民税はふるさと納税の控除対象になりません。
- 退職金から源泉徴収される住民税(退職所得分)= ふるさと納税の控除対象外
- 退職前の給与・賞与にかかる住民税 = ふるさと納税の控除対象
- → 退職金が大きくても、ふるさと納税の枠は退職前の給与所得分だけ
2. 退職した年の上限計算(パターン別)
パターンA: 年の途中で退職、その後無職
例: 6 月末まで勤務(給与 350 万円)、6 月末に退職金 1,500 万円受領、その後無職。
- ふるさと納税上限の計算対象: 給与 350 万円のみ
- 上限の概算: 約 3.5 万円
- 退職金 1,500 万円は計算に入らない
- 退職金から源泉徴収される住民税は別枠
パターンB: 年の途中で退職、その後再就職
例: 6 月末まで会社 A 勤務(給与 350 万円)、退職金 1,500 万円、9 月から会社 B(給与 250 万円)。
- ふるさと納税上限の計算対象: 会社 A 給与 350 万 + 会社 B 給与 250 万 = 600 万円
- 上限の概算: 約 7.7 万円
- 退職金 1,500 万円は計算に入らない
- 確定申告で会社 A・B の給与を合算して申告
パターンC: 定年退職(60〜65 歳)
例: 3 月末で定年退職、退職金 2,500 万円、4 月以降は再雇用で年収 250 万円。
- ふるさと納税上限の計算対象: 退職前給与 + 再雇用給与(4 月〜12 月)
- 退職金は計算に入らない
- 再雇用の年収が低いため、上限は意外と小さくなる
- 「税金の壁ナビ」(年金受給者モード)と合わせて使うと、社会保険含めた手取りも見える
3. 退職金の使い道とふるさと納税戦略
退職金を受け取った年は、ふるさと納税の枠が(退職金がない年と比べて)大きく増えるわけではありません。むしろ「退職した年は給与が半年分しかなく、ふるさと納税枠が小さい」ケースが多いです。
- 退職した年: 給与所得が少ない → ふるさと納税の上限も小さい
- 退職金受領年に大きな寄付をしてしまうと「上限超過」になりがち
- 退職金は寄付金控除と関係ないので、退職金から「ついでにふるさと納税」と考えるのは誤り
- 退職した年は控えめに寄付(上限の 70-80%)するのが安全
4. 早期退職・FIRE の場合
早期退職や FIRE(早期リタイア)した場合も、退職金の扱いは同じです。ただし退職後の所得が大きく変動するため、毎年の上限を再計算する必要があります。
- 退職した年: 給与所得(前職分)+ 退職金(別枠)
- 翌年: 給与所得ゼロ、配当所得・投資所得が中心 → ふるさと納税上限は配当・投資所得から計算
- 投資所得(譲渡益・配当)も分離課税になることが多い → 上限計算に含むかは申告方式次第
- 「ふるさと納税帳」のオンボーディングで「自営業・無職・FIRE」モードを選ぶと、給与なしの上限計算ができる
5. 退職金を受け取った年の確定申告チェックリスト
- 退職時に「退職所得の受給に関する申告書」を提出済みか確認(提出済みなら退職所得の確定申告は基本不要)
- 提出してない場合は退職金からの源泉徴収が「20.42%」の高めになっているので確定申告で還付
- ふるさと納税は通常通り、給与所得分のみ計算して寄付
- ワンストップ特例 5 自治体 OK(給与所得のみで完結する場合)
- 医療費控除など他の控除があれば確定申告 → ふるさと納税も合わせて申告
6. 「ふるさと納税帳」で退職した年の上限を計算する
本アプリでは、退職金を受け取った年の上限計算に対応しています。退職金は別枠として扱い、給与所得部分だけで上限を算出する設計です。
- オンボーディングで「会社員」を選択
- 「退職した年」のチェックボックスがあるので ON にする
- 退職前の給与収入と、退職後の給与(再就職した場合)を分けて入力
- 退職金は「参考値」として入力(上限計算には使わないが履歴として残る)
- 上限計算結果は「給与所得分のみ」の正確な数値が表示
まとめ
- 退職金は分離課税で、ふるさと納税の上限計算に原則含まれない
- 退職した年は給与所得が少ないため、ふるさと納税の上限も小さくなる
- 再就職した場合は前職 + 新職の給与を合算した給与所得で上限計算
- 退職金から「ついでに大きく寄付」は誤り、上限超過のリスク大
- 退職時に「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば確定申告は基本不要
- 「ふるさと納税帳」の退職年モードで、退職金を別扱いした正確な上限が出る